【手】 「今日は寒いねー」 「おう」 いつも殆ど喋らない彼。 何がしたいとか、何処行きたいとか、全部あたし任せ。 ホントはあたしと付き合うの嫌々だったのかなぁ? 告白したのもあたしからだし。 「ねぇ…」 「…ん」 「…なんでもないよ」 ダメだな、あたし。 そう思いながら手袋を鞄の中から出そうとした。 「あれ、…ない?」 「ん、どうした?」 「手袋忘れたみたい…」 「…そうか」 …やっぱりそっけない。 ホントにこれで付き合ってるって言えるのかな? 「…おい、ん」 呼ばれて差し出されたのは彼の手袋。 しかも何故か片一方だけ。 何で? 「それ、左手に付けて」 言われるがままに左手に彼の手袋を被せると、右手が彼の左手に依って奪われた。 若干、彼の顔が赤い。 「ねぇ」 「…何だ」 訊きたい。今でなきゃダメだ。 何故かそう思った。 「あたしのこと、好き?」 「…」 返事は無言に留まったけれど、右手が、それまでよりも強く握られるのをちゃんとあたしは感じ取った。 ちゃんとあたしには届いたよ。