【卒業】

卒業式が終わった後。
3年の教室廊下に人がいっぱいいるのが耐えられなくてあたしは中庭の木の下に行った。

「卒業か…何か実感わかないや」

でもこれで踏ん切りがつけられる。
アイツと顔をあわせなくて済むから気持ちを抑えることをしなくていいんだ。
今日限りでアイツのこと忘れるんだ…

「卒業…しちゃったね」

声のした方を向くとアイツがいた。
正直、夢かと思った。
今までまともに話したことがないアイツが今、あたしに話しかけてきたのだから。

「うん。実感ないけどね」
「だよな?俺なんか明日も普通に来ちゃいそうだよ」

よかった…
ちゃんと会話になってる。

「お前は大学行くのか?」
「うん。でも直ぐそこの大学だからそれも実感ない」

少し笑ってみたけど…顔、引きつってないかな?

「へぇ。俺は就職するんだ」
「社会人になっちゃうんだ?」
「この俺がだよ?なんか信じらんねぇ」

今までのことやこれからのこと2人でたくさん喋った。
今まで一度も喋らなかった分、会話が尽きることがなかった。

「なぁ、この際だから訊いちゃうけど、お前好きなやつとかいなかったの?」
「えっと…」

でも流石にこういうことを言われると言葉に詰まる。

「俺、実はいたんだよ」
「え…」
「でもそいつとは1回も喋ったことなくてさ」

聞きたくない…
でもちゃんと聞いてあげてる振りしなくちゃ。

「バカみたいだろ?喋ったことないやつが好きだなんて」
「そんなことないよ…」

あたしもだから…ね。

「でもさ、やっと…やっと今日話し掛けることができた」
「今日?」
「うん。そいつ教室から1人出て行ったんだもん。チャンスだと思ったな」
「…」
「…お前のことだよ」

やっぱりこれは夢か。
都合よくことが進むわけない。

「起きなきゃ…」
「は…?」
「こんな都合のいいこと夢じゃなきゃ有り得ない…」
「ははっ…現実だよ。…俺ずっとお前のこと好きだったんだ。せっかく勇気出して言ったのに夢だとか言うなよ…」

彼が不意に哀しそうな顔をした。

「あ、ごめん。そだよね。夢なんかじゃない…よね」
「俺さ、『卒業』したいんだ」
「したじゃん、さっき」
「いや、お前への気持ちから」
「…あたしも『卒業』したい」
「…?」

深呼吸して落ち着いてから彼の目を見て言った。

「あたしもずっと好きだった」


学校からの卒業。
そして片恋からの『卒業』。