【いかんといて】


「何処行くん…?待ってよ…置いてかんで…」


「おぃ…寝ぼけてんのか?何言ってんだ…」

目をあけて彼の姿が見えた途端、無意識にぎゅって抱きついてた。
ちゃんと傍にいてくれてた。
涙が零れてとまらない。

夢…見てたんだ、あたし。
彼が何処か遠くへ行っちゃう夢…
どれだけ呼び止めても知らない女の人と一緒に、あたしの方振り向かずに歩いて行っちゃう…

「どうした…怖い夢でも見たか?」
「うん…あなたが…何処か行っちゃっ…て…」

ヤバイ…
思い出すだけで涙が溢れてくる…
強く強く、彼にしがみつく。
この腕からするりと抜けてしまわないように。

「大丈夫、そんなことないから。傍におるから」
「ずっとおって…」
「ずっとおるよ」


あたしから離れていかんでな…





あとがき