【Chocolate】


「先輩!」

誰かと思って振り向いた。
あぁこの子か。
校内で会う度に声をかけてくる、ちょっとだけ、ウザい子。

「ん!」

ん?

「何この手」

彼は両手を差し出しておねだりの表情を見せている。

「さて問題!今日は何月何日でしょう?」
「2月14日」
「流石先輩!で、僕のは?あるんでしょ?チョコ」

自信満々ね。
なんだか餌を欲しがる子犬みたい。

「何で?」
「ないんですか…僕哀しいな…」

あ、落ち込んじゃったな。
自分の気持ちに素直な子だねぇ。
ちょっと意地悪してみよ。

「あたし、チョコは彼氏にしかあげないの」
「先輩、彼氏いるの!?」
「いないけど…」

あ、ちょっと刺激強すぎたかな…

「じゃぁ僕を先輩の彼氏にして下さい!」

え、そうくるの!?
んでも頭を下げてまでお願いされちゃぁ…

「…ん」
「え…?くれるの?」

だって…

「いらないなら返して」
「それは嫌。…でも『彼氏』にしかあげないんじゃないの?」

だから…

「そうだったかしら?ま、あんたにあげるわよ。あたし急ぐから。じゃね」

あたしって嫌な女ね。
彼に背を向けて歩き出した。

「先輩チョコありがとう!好きです!」

そんなに大きな声で言ったらみんなに聞こえちゃうよ。
恥ずかしいじゃんか…

「ありがと」

歩きながら、彼に背を向けながら、けれどちゃんと君に届くように呟いた。


ホントはあのチョコ、君の為に作ったんだけれど教えてやんない。
だってあたしは意地悪で天邪鬼だから。
それに、もう教える必要ないでしょ?